西村由紀江プロフィール 『子どもたちは感受性がとても強い! 柔軟かつ、本気で向き合ってくれますよ』  20年以上第一線で活躍しているプロピアニスト・西村由紀江。 ニューアルバム『ビタミン』の発売間近の10月某日、中央区のとあるスタジオで彼女のライフワーク(学校や病院でのコンサートなど)のひとつでもあるワークショップが開催された。 ピアノを習い始めて間もない小さい男のコから小学校高学年のレベルの高いコまで一人ひとりの演奏に細かく、とても丁寧にアドバイスをする姿はまるでピアノ教室の優しい先生!? 「あの西村由紀江さんが!!!」 まさかの光景に(笑)驚きと微笑ましい時間はあっという間に過ぎていった。 —今日はピアノ教室の生徒さんたち(8人)へのワークショップということでしたが、通常はどんな形態で演られることが多いでしょうか。 西:その時によって、さまざまですね。学校など大勢の生徒さんの前で演奏するときはステージの上ではなく体育館のフロアーにピアノを置き、あえてみんなと同じ目の高さで楽しんでもらうようにしています。距離だけではなく、子どもたちとの近さというんでしょうか、それをなるべく気をつけて演ってます。 —子どもたちへ向けての音楽活動となれば上から下までかなり年齢差があると思いますが、西村さんの接し方や、観て、聴いてくれる子どもたちに何か違いはありますか。 西:やはり最初は私のことを「どんな人だろう…?」と警戒してるんですよね(笑)、でも時間が経つにつれ、どんどん子どもたちの方が柔軟に対応してくれて、こちらに飛び込んできてくれてる気がします。「あぁ、この人こういう人なんだ」って察知する高い順応性を持ってますね。例えば大人だと「この人凄い人」だとか、「ピアノの先生」だとか一度でも思ってしまうと、どうしても距離を置いてしまいがちですが、そういう部分も含め、子どもたちはとても柔軟です。そして最近自分でも確信したんですが、「私って相手に対して態度を変えないなぁ…」って(笑)。子どもが相手だからといってジャスチャーを大きくしてみたり、語尾を伸ばしたり、いかにも子どもっぽいような話し方はしないんです。普通に、学校コンサートなんかでもいつものコンサートのMCみたいに、「こないだこんなことがあったんですが…」って話すと、みんな「へぇ〜」って普通に聞いてくれますよ。
—学校はもちろん、病院など、ゲストととても近い距離。それも普段クラシックに触れる機会の少ない場所で西村さんが音楽を演ってみようと思ったきっかけは? 西:「自分はどうしてこんなに音楽活動を続けられているんだろう?」、「何が今いちばん楽しいんだろう?」と、デビューして10年ちょっとくらい経って、ふと振り返ったとき、ピアノの技術が上達したことではなく、自分が良い曲作ったことが嬉しかったことでもなく、思いついたことの全部が人に関わることだったんです。私自身がピアノを弾いたことで、「元気が出ました」とか声を掛けてくださったり、教育テレビでレッスン番組に出演したのを観てくださったお年寄りの方が「私もこの曲を一生懸命弾き始めたんですよ」とかおっしゃってくださったり。そういう時の充実感というのは、自分が良い曲を弾けたとかいうこととは全然違った次元の幸せな気持ちだというのを感じて、「あ、私はこの気持ちを求めて、ずっとピアノを弾いてきたんだ」と気づいたんです。だったらステージから客席へ向けて良い音楽を提供するという姿だけではなく、もっと違う活動の仕方があるんじゃないだろうかと考えていたとき、とある学校の先生から「ウチの学校で演ってみませんか?」というお話をいただいたんです。そこから学校コンサートが始まりました。 —子どもたちの反応は? 西:ホント、ストレートなんですよ。コンサートではオリジナル曲も弾きつつ、みんなが知ってるポップスだったり、物語の朗読しながらピアノを弾いたり、みんなで手拍子をするリズム遊びだったり、いろんなコーナーを混ぜて1時間というメニューで演ってるんです。子どもの集中力って、小学生でだいたい20分くらいと言われてるんですが、それが嬉しいことに、ちゃんと最後まで集中してくれるんです! 「ここは遊びのコーナー!みんな一緒に手拍子して!!」っていうと、立ち上がって大きな手拍子をしてくれる子もいたり、「じゃあ疲れたから今度は深呼吸しよう!」という曲を弾くと、みんなで深呼吸、「はい、次はみんなで地球の平和を祈ってる曲弾くよ!」というと、みんな目を閉じて一生懸命聴きながら祈ってくれたりね(笑)。子どもたちはみんな感受性がとても強い! 本気でこっちと向き合ってくれます。そんな感じで学校コンサートを演ってます。 —楽しいと集中できるんですね。 西:みたいですねぇ〜(笑)。嬉しいのが、小学校2年生くらいの子が、初めは「ピアノの曲なんかつまんないなぁ〜」って言いながら聴いていたのに、終わったら立ち上がって拍手してくれたりするんです。たまんないですよ! —なんかアウェイをホームにしちゃった感じですね。 西:本当にそうなんです(笑)。 —きっとそういう所には父兄の方もいらしてると思いますが、そんな風に楽しそうにしてるご自分のお子さんを見てるパパやママもハッピーな気持ちになりますよね。 西:そうだと嬉しいですねぇ〜。私は子どもの可能性を学校コンサートをやる度に実感するんです。彼らのスゴイ所って、「ピアノの音がきれいでした」という感想に止まらないんです。例えば柔道をやってる男のコから、「西村さんは今日まですごく努力してがんばってきたと思います。よくがんばりましたね」って(感想文に)書いてあるんです(笑)。 —嬉しくって泣きそうですね(笑)。 西:でしょう(笑)。で、「僕も西村さんに負けないように練習は辛いけどがんばります、お互いにがんばろうぜ!」って。これってすごいと思いませんか? 私のピアノをちゃんと自分のことに置き換えてるんです。ただピアノの曲を聴くだけじゃなく、私の人生をちゃんと彼らは受け取ってくれてる訳でしょ? そういう意味では、新聞やニュースで、「最近の子どもは!? 」みたいなことを目にしますけど、とても純粋だし、自分の子どもの頃と変わってないなぁ〜ってつくづく思いますね。かえって希望を感じます。 —そういうのを再確認できるのって羨ましいですね。 西:羨ましいでしょ(笑)。ホント楽しいですよぉ〜。でも本当に一瞬だけでも「嬉しい」や「楽しい」と思えるだけでも何かが違うと思うんです。そういうお手伝いができることがすごく幸せですし、その対象は子どもだけに限らないんです。大人の方でも心の鬱を抱えてる方が「もう1回新しい気持ちでがんばってみようと思います」とか、「久しく会っていない母のことを思い出しました。家に帰ったら母に電話しようと思います」とか。音楽を通じて、生活のほんのちょっとのお手伝いができたら幸せですね。 —今後もこの活動を続けていかれると思いますが、これから子どもたちとどのように関わっていきたいと思いますか? 西:繋げていきたいのは音楽そのものだけではなく、マインド的なことを子どもたちに伝えていきたいと思っています。「がんばったらいつかきっと良いことがあるよ」とか、「誰かがきっと見ててくれてるよ」だったり、ピアノの曲を聴いて一瞬でもいい、優しい気持ちになってケンカしてたお母さんと仲直りしたとかでもいいですし。とにかく音楽そのものだけではなく、人間的なマインドや生きていく上での素晴らしさみたいなモノを子どもたちに伝えていければいいと思いますね。 『私の息遣いや温度も感じられる作品』 西村由紀江CD —リリースになったばかりのアルバムは、タイトル通り優しくしみ込む『ビタミン』のようですね。 西:嬉しいなぁ〜(笑)。ありがとうございます! 頭ごなしに、「はい、この作品聴いてください」とうったえかけるのではなく…、人にはそれぞれいろんなシチュエーションがあると思うんですが、どんなときでも一歩一歩を確かに歩いていく。そんな姿を隠すことなく表現したいなって思ったんです。だから、これは専門的なことなんですが、レコーディングのときに、きっちりとした演奏を目標にするのではなく、私らしさも大事にしつつ、マイクをすごく近づけて、私の息遣いや温度までも感じられるようなレコーディングのやり方をしましたね。 —生身こだわりですね。 西:そうですね。一人の女性としていろんなことを経験していきたいですし、もしかすると失敗するようなこともあるかもしれない。でも失敗を怖がらずに私らしく、新しいことへの挑戦を積み重ねていければと思います。 —そして年明けには全国くまなく回るツアーが決定! 福岡はファイナルの1つ前。1月24日(日)。とても楽しみです。 西:私も、福岡でのツアーは2年ぶりなので本当に楽しみです。コンサートでは客席にアロマの香りを流すんですよ。『ビタミン』のイメージに合わせてハーブのブレンドを作ってもらいました。ビタミンを象徴するレモン、そしてインフルエンザなどのウイルスを和らげ免疫力も高まるユーカリなどをブレンドしたんです。 —じゃあライヴに行くと健康にもなれるんですね。 西:ですね、安心して来れるコンサートです(笑)。  —お子さんも安心ですね(笑)。では最後にメッセージをお願いします。 西:お子さんからママさん、ピアノのコンサートが初めてという人にも楽しんでもらえるライヴにしたいと思っているので、まさに子育てにちょっと疲れてる方にこそ、遊びに来てもらえたら嬉しいです! インタビュー:ツジゴウマユミ
西村由紀江 Vitamin Tour 2010 ●1月24日(日) イムズホール(福岡)  開場16:30 開演17:00  問)BEA TEL.092-712-4221 ■西村由紀江official homepage http://www.nishimura-yukie.com/